婚姻届を勝手に出すことは出来るの?
「婚姻届を勝手に出されたらどうしよう。。。」
と不安になる人もいるでしょう。
なぜなら、婚姻届の署名は、印鑑が無くても自筆さえあれば、受理されますし、証人の2名も成人であれば、誰でもなってもらえるからです。
自筆と言っても市役所職員が筆跡鑑定するわけでもないので、届出人欄にしっかり名前が書かれていれば、そのまま受付されるのです。
もちろん、知らない間に勝手に婚姻届が出されても、後から家庭裁判所で「婚姻を無効にする」審判を経て届け出ることで、婚姻を無かったものと出来ますが、そのようなことになると、手間がかかって仕方がありませんよね。
婚姻届を偽造して出すと、罰則もありますし、そのようなことをする人は少ないかもしれません が、万が一のことを考えて対策する方法はあります。
※罰則:刑法157条1項(公正証書原本不実記載等罪) 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金
婚姻届を勝手に出されないようにするための不受理申出書
対策として考えられるのは、「不受理申出書」を提出しておくことです。
この不受理申出書を提出しておけば、万一、誰かがあなたの名前をかたって、婚姻届を出しても受理されることはありません。
よくあるケースとして、婚姻届を書いた時は、この人と結婚しても良いと思って署名したけれど、やっぱり気が変わった。
でも、既に署名した婚姻届を相手に渡しているので、勝手に出されてしまいかねない状態。
そのような時は、「不受理申出書」が役に立つのです。
この不受理申出書は、一度出してしまえば期限がなく、ずっと有効。
申出した人が取り下げない限り、婚姻届を受理されることがありません。
うっかり、不受理申出書を出したのを忘れていて、申出したあなた自身が婚姻届を出しても、受理されないことがあるので、注意して下さい。
受理されない場合とは、受付窓口で本人だと確認できない場合です。
例えば、運転免許証、マイナンバーカードなどの本人確認書類を忘れた場合などですね。
また、祝休日などで、戸籍受付担当職員が対応できない場合です。
運転免許証など本人確認書類を持参して、不受理申出した本人が、あなただと確認が出来れば、通常どおり受理されるので、必ず顔写真付きの身分確認のできるものを持って行きましょう。
不受理申出書は、本籍地の市区町村役場へ提出することができます。
でも、お住まいの場所から本籍地の市区町村役場が遠く、提出が難しいなら、お近くの市区町村役場でも受け付けてもらえます。
不受理申出書は24時間365日受付可能ですが、平日の時間外や休日の提出は、本籍地や住所確認などの照合をとる関係で、届出人が翌業務日に改めて来庁する必要が出てくるでしょう。
また、不受理申出書の提出時は、本人確認書類の原本が必要なので、運転免許証やマイナンバーカードなどを持っていくことになります。
※本人確認書類は職員がコピーを取って返却します。
不受理申出書を受付た時間を、分単位で届書に職員が記入するので、その時間から婚姻届が受付不可となるのです。
もし、婚姻届を勝手に出される恐れがある状況なら、不受理申出書を出しておくと良いかもしれないですね。
もし、婚姻届を勝手に出された後であれば
婚姻届の署名が本人のものかどうか分からない状態でも、役所側は戸籍法上、形式が整っていれば受理せざるを得ません。
なので、届出人が、本人確認書類を持って来ていないなら、「婚姻届が提出された」ことを本人宛の住所へ通知することが法律上、定められているのです。
もし、この通知に気づけば、婚姻届の無効手続きを進めることができるキッカケになりますよね。
婚姻は、あくまで当事者2人が、結婚するという意思を持っていることが必要条件とされているので、結婚する意思がないのに、婚姻届が出された場合は、婚姻は取り消しではなく無効となるのです(742条第1号)。
でも、この時点で戸籍に婚姻事項が記載されてしまっていれば、戸籍を元に戻す、戸籍訂正申請が必要になります。
そして、戸籍の訂正申請をするためには、家庭裁判所の審判書謄本が必要になるので、家庭裁判所へ問い合わせすることになるでしょう。
※ここで、役所へ婚姻届の無効を求めても、相手にしてもらえません。
具体的な手順は、家庭裁判所に、婚姻無効確認の調停を申し立てる必要があります。
もし、調停の話し合いで、勝手に出した張本人が、結婚を無かったことにする意思を示して同意すれば、その内容の和解調書が作成され、この争いは終了。
でも、同意しなかった場合は、婚姻無効確認訴訟を提起する必要があるのです。
婚姻届にされた署名が、夫婦となる届出人の筆跡と明らかに異なっていれば、早期に解決に向かい無効となる可能性は高いといわれています。
一度でも2人が同棲していた期間があれば、離婚して婚姻解消とされてしまう可能性もあるかもしれません。
でも、そうでない限り、家庭裁判所も無効を訴え出た申出人に対して結婚を継続させておく意味もないですから、ほぼ、婚姻無効は認められるといわれています。
そういう事情もあり、比較的、早期に決着がつく裁判となっています。
調停や裁判がまとまれば、「家庭裁判所から発行された無効内容の載った審判書謄本(和解調書等)」と「戸籍訂正申請書」を役所へ提出することで、結婚した事項が消されるのです。
※戸籍訂正申請書は役所にあります。
※戸籍訂正書を本籍地以外の役所へ提出する場合は、現時点の戸籍謄本を持参する必要があります。
戸籍の訂正は受理されてから1週間程度の時間を要しますが、それ以降、戸籍謄本などの証明にも反映されるというわけです。
このように、相手に勝手に婚姻届を出されると、かなり苦労することになります。
もし、ここまで大ごとにされた相手に対し、法による処罰を望む場合は「公正証書原本不実記載等罪」や「有印私文書偽造罪」、「同行使罪」などで刑事告訴するという手段もあります。
いずれにせよ、ここまでの苦労をすることのないように、不安のある人は不受理申出書を事前に出しておくことをオススメします。